00006 哲学について考える

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自分がなぜ哲学をしているのかわからなくなってきた。カント哲学は、数学や自然科学の技術革新をまねる形で、コペルニクス的転回を哲学に導入した。つまり、太陽が地球の周りを回るのではなく地球が太陽の周りを回っているのだと喝破した科学者に習って、認識が対象に従うのではなく対象が認識にしたがうのだと宣言した。これがカント哲学の出発点であり、認識論の躍進の始まりである。
しかしカントは重要なことを他にも言っている。自然科学では、科学者が自然の生徒になるのではなく、裁判官にならなければならない。そして自然に答弁を強要せねばならないと。つまり実験という人為的活動のことである。自然科学は実験があったから進歩した。であれば、哲学にも実験をドシドシ取り入れて行く必要があると、カント流に考えるならそうならないだろうか。
裁判官は私であると同時に、被告も私である。私の中にある法則を明にするために法廷が開かれるのである。つまり思考実験である。私は暴トロ(トロッコ問題)を初めとして哲学的な思考実験が大好きだ。ここには、自分の理性が問い詰められて頭を抱えている様が見えるのだ。そしてそこから引き出される答弁の矛盾。自然とは違って理性は矛盾した答弁をする。それをどう捉えていき、さらに新しい質問を投げかけるかが、哲学の面白いところなのだと思う。